異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(カイブルはわたしにとって、おにいしゃまみたいな人で、大切な人だから……)

 奪われたならば、取り返すしかない。

 キララはカイブルが負傷している姿を目にしただけで、聖なる力を使おうともしなかった。
 それだけ聖女にとって、彼はどうでもいい存在なのだろう。

(カイブルのことを、なんとも思ってないなら。わたしに返して!)

 カイブルはロルティの元に戻ってきた。
 あとは彼が目を覚まし、彼女に優しく微笑む姿を見るだけだ。

「ロル、テ……さ、ま……」
「カイブル!?」

 何度も何度も祈り続けた幼子の願いが通じたのか。

 聖騎士は視線を彷徨わせ、か細い声で彼女の名を呼んだ。
 そんな彼の様子を見かねたジェナロは、自身の腕から抜け出た愛娘を後ろから抱きかかえ直すとゆっくりと膝を折り曲げ、ロルティがカイブルと触れ合えるように近くに寄り添った。

「泣か、ないで……。くだ、さい……。この程度の傷、なんとも、ありません……」
「でも……! 血が、止まらないの……!」
「私を好きだと、言ってくださった……。その喜びだけで……。傷を癒せます……」
「嘘つき……!」

 ポタポタとこぼれ落ちる雫が大地を濡らし、小さな水溜りができた頃。
 眩い光とともに、真っ白なもふもふとした毛並みを持つ獣が飛び出てきた。
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