異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(ど、どうしよう……。なんだか、勘違いをしているみたい……)

 どうやって兄を止めればいいのかと視線を彷徨わせていれば、先程まで怒り狂っていたのが嘘のように優しい微笑みを浮かべたジュロドが、ロルティに手を差し伸べた。

「おいで。ロルティ。こいつは危険だ」
「おにいしゃま。でもね? わたしはカイブルのことが……」
「あんな男の名前を呼ぶ必要なんかない。あいつのことは、あれ、とか。これ、とかでいいんだよ」

 ジュロドがツカツカと足早に目の前まで、やってきたからだろう。

 彼と目線を合わせるためにカイブルがその場でしゃがめば、兄は強引にロルティを聖騎士の腕の中から奪い取ると、彼女を抱き寄せ背を向けた。

「着いてくるな!」
「申し訳ございませんが、ジュロド様のお言葉には従えません」
「僕は公爵家の息子だぞ!」
「閣下より、ロルティ様を任された身ですので……」
「それは公爵家の外だけの話だ! 自宅には僕がいるから、君は必要ない!」

 廊下を経由し自室へ戻る間にも、2人の言い争いは永遠と続いている。

(この2人、どうしてこんなに仲が悪いのかなぁ……?)

 ロルティが不安な気持ちでいっぱいになっていることすらお構いなく怒り狂っているあたり、兄のカイブル嫌いは相当根が深いようだ。
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