異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 犬はウサギの小さな身体を口で加えると、背中に乗せて「一緒に遊ぼう」と語りかけた。

「んきゅ……!」
「わふーん!」

 アンゴラウサギは一目散に犬の背から飛び降り部屋の隅に挟まって逃げたが、犬は何度もじゃれ合いを繰り返す。

 その様子をじっと見つめていたロルティが不安そうにしているのを、カイブルと兄の件に何か言いたいことがあるのではと勘違いしたのだろう。

 ジュロドはパンっと手を叩くと、気持ちを切り替えるように指示を出した。

「さぁ、ロルティ。あんな奴のことなんか忘れて、汚れたドレスを着替えようか」
「おにいしゃま、でも……」
「ロルティは僕より、あいつがいいの?」

 ジュロドとはいつでも話ができる。

 だが、カイブルは神殿で働く聖騎士だ。
 こうしてロルティの護衛を父親から任されているのは一時的なことであり、またすぐ神殿へとんぼ返りしてしまうかもしれない。

「せっかく会えたのに……。わたし、カイブルとたくさんお話したいことが、あったんだよ……?」
「あいつと言葉なんて交わしたら、ロルティが穢れる」
「おにいしゃまは、カイブルが嫌いなの……?」
「そうだよ。僕はあの人を、視界に入れたくもない」

 ジュロドは手馴れた手付きでクローゼットを開け放つと、ロルティのドレスを選んで室内に控えていた侍女へ手渡した。
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