異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 本来であれば自らの手で着替えを済ませてやりたいが、そのためには下着姿になる必要があるからだ。
 いくらロルティが幼子で、彼が兄であったとしても、父親がそれを許さなかった。

 ――だからこそ。

 彼女は試着室のように薄い布でぐるりと一周目隠しがなされた着替えスペースの四角い箱の中で侍女とともに籠もり、兄の呟く声に耳を傾ける。

「よくも公爵家にのうのうと、顔を出せたものだ。裏切り者のくせに……」
「カイブルと、お話しよう!」
「僕は嫌だ」
「おにいしゃま……」
「かわいい妹の望みでも。それだけは絶対に……」

 侍女はロルティのドレスを着替え終えると、勢いよくカーテンを開く。
 ジュロドは唇を噛み締め、今にも泣き出しそうな表情で下を向いていた。

(おにいしゃまも。好きでカイブルを嫌ってるわけじゃ、ないんだよね……?)

 カイブルは青年だが、ジュロドとロルティはまだ子どもだ。

 妹が自分の嫌いな人物を慕い味方になるなど言えば、より彼に対する憎悪を募らせるだけだろう。

(わたしはおにいしゃまの、妹だもん。味方になってあげなくて、どうするの?)

 ここで兄を突き放せば、カイブルにも危害が及ぶかもしれない。
 今よりもっと収集のつかない状況になれば、ロルティも2人を結びつけるのが困難になる。
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