異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「わふ!」

 まるで「こっちだよ!」と言うかのように元気よく手足を動かし歩く犬の後ろに、アンゴラウサギを抱きかかえた不安そうな顔のロルティが続く。

(おにいしゃまやカイブルが戻ってくる前に、お部屋へ戻らなきゃ……)

 ロルティにも、これがいけないことだと言う認識くらいはあった。
 悪いことをすれば、酷い罰を受けると。

(パパは、おとうしゃまとは違うもん……)

 彼女が神殿で暮らしていた際、養父を自称する男はロルティに修行と称してさまざまな暴行を加えてきた。

(あんな恐ろしい経験は、もう二度としたくない……)

 彼女は脳裏に忌々しい男と同時に、父親の顔を思い浮かべる。

(わたしに酷いことなんて、しないよね……?)

 ロルティは無表情で険しい表情をしていることの方が多いジェナロが、自分にだけは怖がらないように優しく微笑みかけてくれる姿を想起しながら、前を歩く犬を追いかけた。

「わ、わたしにお嬢様を、毒殺しろと言うのですか!?」
「声が大きい!」
「す、すみません……」

 ロルティを導いていた獣は、通路へ飛び出す前に止まった。
 どうやらこの先の廊下で、メイドと男性が話し込んでいるらしい。
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