異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「あれ……?」

 足音は1人分しか聞こえなかったのに、なぜメイドまで姿を消しているのだろうか。
 ロルティは不思議な気持ちでいっぱいだった。

(男の人がメイドしゃんを、誘拐したとか……?)

 もしもそうなら、啜り泣く声が足音とともに遠のいていかなければおかしいはずだ。
 彼女は首を傾げながら、落ち着きを取り戻した胸元のアンゴラウサギに話しかける。

「うさぎしゃんが怖がってたのは、あの男?」
「もきゅ……」

 獣は肯定するように、再び全身を震わせた。
 どうやら話題に出すことすらも恐ろしいと感じるほど、あの男を嫌っているらしい。

「そっか……」

 ロルティの命を狙っている男だ。
 アンゴラウサギが怯えるのも無理はないだろう。

(わたしを心配して怯えているようには、見えないけどな……)

 もしもそうであれば、犬だって黙っていないはずだ。

 だがもう1匹の方は大人しくしており、男女の会話を盗み聞きできる場所まで主人を連れてきたことを褒めてほしいとばかりにロルティを見上げていた。
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