異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「ロルティ」
「パパ? どうしたの……?」
兄とともにキングサイズのベッドに横たわって昼寝をしていた幼子は、寝ぼけ眼を擦りながらベッドサイドに怖い顔をして佇む父を見つめた。
(なんかあったのかな……?)
彼はロルティを怯えさせないように、いつだって優しく微笑むか無表情を貫いている。
そんなジェナロがこれほど恐ろしい顔をしているのであれば、愛娘に危機が及ぶような出来事が近辺で起きたと考えるべきだろう。
(眠い、けど……。ちゃんと、聞かなくちゃ)
瞼が閉じないようにゴシゴシと何度も小さな手で目元を擦っていれば、左横から手が伸びてきて、彼女の手首を掴んでそれを止めるものが現れた。
彼女は思わず父親から視線を外し、その手の主を見上げる。
「おにいしゃま?」
「駄目だよ、ロルティ。強く目を擦ったら。傷ついてしまう」
「んんぅ……。でも、眠くて……」
「無理して起きていなくたって、いいんだよ。父さんには、出直してもらおう」
「……パパ、忙しいのに……」
「ロルティの意志は、どんな出来事よりも最優先しなきゃいけないんだ。そうだろ? 父さん」
「しかし、だな……」
ジュロドから問いかけられた父親は、珍しく視線を逸して気まずそうにした。
普段であれば息子の言葉に同意をしていたが、それができないほど重要な何かが起きていると悟るべきだ。