異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「……あれ?」

 ロルティが不思議そうな声を出すのも無理はない。
 なぜならそこは、もぬけの殻だったからだ。

「カイブル。いないよ……?」
「地下に潜っているのでしょう」
「悪人にありがちな展開だな」
「少々お待ちください。隠し通路を出現させますので……」

 カイブルは慣れた手付きでレンガ造りの壁を何箇所か叩いて軽快な音を奏でると、中央に置かれていた女神像が音を立てて動き、地下に繋がる階段が姿を見せた。

 これにロルティは大興奮。
 瞳をキラキラと輝かせ、カイブルを見つめた。

「すごーい!」
「参りましょう」

 彼女に褒められても顔色1つ変えずに唇を引き結んだ彼は、迷いのない動作で階段を下り始めた。

「わふっ。わふーん」
「かこん、かつん、たたーん」

 カツカツと階段を下る際に聞こえる独特な音に合わせて、ロルティと犬のハーモニーが奏でられる。
 彼女は薄暗く狭い場所が、嫌いではないようだ。

「ご機嫌だな」
「うん! だってパパとカイブルが、おとうしゃまを、やっつけてくれるんでしょ!」
「……父、だと?」

 愛娘が司祭のことを父と呼んだことに、血の繋がった実父であるジェナロは怒りを抱いているようだ。
 明らかに不機嫌そうな声を耳にしたロルティは、自分が間違っていないことを証明するためにカイブルに問いかける。
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