異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(うさぎしゃんが男の人に怯えて、神殿には来たくないって態度を示してたのは……。おとうしゃまが命じて、酷いことをしてたから……?)

 彼女を背に乗せていた犬が、「なんて酷いことをする奴だ!」と怒ってるかのように唸り声をあげる。

 ロルティは獣の背を優しく撫でつけ落ち着かせようと必死になりながら、司祭を睨みつけた。

「私はてっきり恐怖の涙でしか聖獣を生み出せないと思っていたのですが、安堵の涙でこれほどまでに立派な獣を召喚するとは……!」
「黙れ」
「さすがは聖女様です! くだらないごっこ遊びなどやめて、私の娘として生きなさい。この国を支配した暁には、今よりもっといい暮らしをさせてあげましょう」
「家族ごっこではない! 俺はロルティの父だ! 愛娘に話しかけるな……!」
「話にならぬ……」

 実父と養父。
 2人の罵り合いを耳にした娘は、ぎゅっと左手で握り拳を作りながら感情を押し殺した声で呟く。

「わたしだけじゃなくて、うさぎしゃんのことも、傷つけたんだ……」

 出会いは偶然だったが、アンゴラウサギはロルティにとって家族と同じくらいに大切な存在だった。
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