異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(絶対に許せない……!)

 自身の中でムクムクと怒りが浮かび上がり、肥大化していくのを感じながら。
 ロルティはそれを押し留め切れず、一気に声に出して開放した。

「おとうしゃまは、すっごく悪い人だ!」
「わふ! わふん!」
「大好きなうさぎしゃんを、いじめるような人なんて! 嫌い!」

 彼女を背に乗せていた犬が、「そうだ!」と同意するように鳴き声を上げる。
 ロルティの拒絶が、司祭との決別をはっきりと決定づけた瞬間だった。

「ロルティ様を怒りでいっぱいにさせた罪……償ってもらいますよ」
「はっ! 裏切り者が……!」

 養父の視線がロルティとジェナロへ向いていたのをいいことに。

 気配を消して鞘から剣を引き抜いたカイブルは、あっと言う間に悪態をつく司祭を拘束する。
 喉元へと鋭利な鈍色の切っ先を突きつけ、悪人を無効化した。

「ロルティ……」
「わたしのパパは、1人だけだもん。ねぇ、そうでしょ?」
「ああ……!」

 手慣れた手付きでポケットから拘束用の縄を取り出したカイブルが、司祭の自由を奪い口元に使い古したハンカチを突っ込む中。
 今にも泣き出しそうな瞳で愛娘を見つめた父親に、ロルティは笑いかける。
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