異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 感極まったジェナロは犬の背から愛しい我が子を抱き上げると、強く抱きしめながら謝罪を繰り返す。

「すまない……本当に……!」
「もう。パパったら……。謝ってばっかり……」
「俺がもっと……」
「弱虫なパパなんて、見たくないよ! ねっ。笑って?」
「ロルティ……」
「わたしはいつも優しくしてくれるパパが、大好き!」
「ああ……っ。俺も、愛している……!」

 ジェナロは泣き笑いのような笑顔を浮かべたあと潤んだ目元を強く擦って普段の調子を取り戻すと、司祭の移送準備を整えたカイブルを見つめた。

「カイブル。そいつを運ぶのは、任せてもいいか」
「もちろんです」
「あとは神官共を、黙らせるだけか……」
「それならわたしに、お任せください」

 先ほどまで司祭が座っていた椅子の前に置かれたテーブルをガサゴソと漁った彼は、持ち運びやすい小さなスタンドマイクを手に取った。

「ロルティ様。少しだけ、お静かに願います」
「うん。わかった! しぃ~って、するね!」

 護衛騎士が口元に人差し指を当てた動作を目にしたロルティは、ニコニコ笑顔を浮かべて唇を噛みしめる。

 主の同意を得た彼は、マイクのスイッチをオンにして静かに声を発した。
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