異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
(いきなりそんなこと言われても、わかんないよ……)

 あれこれ欲しがる以前の問題だった。

 幼い彼女には、圧倒的に知識が足りないのだ。
 だからなんでも好きなものを望んでいいと言われても、うまく思い浮かべられない。

「すまない。質問が悪かった」
「ふぇ?」
「これから一緒に、探していこう」
「うん!」

 そんな愛娘の姿を目にしたジェナロは、自身の態度を反省したのだろう。
 彼はロルティに微笑みかけると、近くの雑貨屋に足を踏み入れた。

「いらっしゃいませ!」

 カランコロンとドアの上空に備え付けられたベルが鳴り、愛娘を抱きかかえたジェナロが来店したことを知った店主は満面の笑みを浮かべる。

 歩み寄ってきた男に、ロルティは口元を緩めて挨拶を返す。

「こんにちは!」
「これはこれは! ハリスドロア公爵! かわいらしいお子さんをお連れで……!」
「わたし、ロルティ!」
「元気いっぱいですね。ご親戚のお子さんでしょうか?」
「娘だ」
「……はい?」

 雑貨屋の店主はあまりにも衝撃的な言葉を耳にして、彼が目上の立場であることも忘れ素っ頓狂な声とともに聞き返してしまった。
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