異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 鬼の形相で睨みつけられた雑貨店の男は、二の句を紡げず渋々ヘアアクセサリーを梱包し始めた。

「……どうか、これ以上は……。ご勘弁願えないでしょうか……」
「用事が終わればすぐに退店する」

 店主はたった1日で普段とは比べ物にならないほどの売上を記録するより、ハリスドロア公爵親子がさっさと退店する方が嬉しいようだ。

(……なんか、変なの)

 話を聞いていたロルティは不思議に思いながらあたりを見渡し、ある場所で視線を止めた。

 そこには色違いのティーカップが、3つ並んでいる。

 赤、金、緑。ハリスドロア公爵家の家族3人と同じ、瞳の色をした食器だ。
 彼女はそれを勢いよく指差すと、父親に告げた。

「パパ! あれ! お揃い!」
「――なるほど」

 店主を睨みつけていたジェナロは、愛娘の声を耳にして満足そうに優しく微笑んだ。
 彼女がなぜそれを気に留めたのか、すぐに理解したからだ。

「よく見つけたな」
「えへへ!」

 彼は愛娘の頭を優しく撫で付けると、店主に向かって指示を出す。

「このティーセットを3つ、包んでくれ。あまり俺を待たせるようなら……」
「ひ、ひぃ! ただいま!」

 恐怖で指が震え包むのに時間がかかっていることに気づいたジェナロが念押しすれば、店主は悲鳴を上げながら忙しなく動き始めた。
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