異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「丸めた毛を膝のあたりまで持ってきて、ピンと糸を張ってください」
「こう……?」
「お上手です。足でゆっくりとペダルを踏み、毛を後方に引いてください」
「手と足で、違うことするの?」
「はい」
「わたしにできるかなぁ……?」
「無理だったら、僕がペダルを踏むよ」
「うんっ!」

 まずは1人でやってみたらどうかと促されたロルティは、恐る恐るペダルを踏みながら毛をゆっくりと自身の方向へ引いた。

 すると滑車がくるくると周り、細い糸がフライヤーへ巻きつけられていくではないか。

「わぁ……! すごーい!」

 まるで魔法のような出来事に、彼女は目を丸くしながら大喜びした。
 メイドは先程までの無表情が嘘のように口元を緩めると、根気よく幼子に指導する。

「これを手元の毛がなくなるまで、何度も繰り返します」
「おお……!」
「続きをやってみましょうか」
「うん!」

 ロルティはカラコロと音を響かせながら交互にペダルを踏み、糸を紡ぐ。

「いっちに、いっちに!」

 足踏みをしながら手元は糸が切れないようにしっかりと毛の塊を持って押さえ、自分の方へ引くのはかなり気を張る。
 最初のうちは元気いっぱいだったロルティも、5分と経てばあっと言う間にバテてしまった。
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