異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
「父さんを、呼んできてもらえるかな?」
「承知いたしました」

 兄が近くに控えていた使用人達に指示を出す声を聞きながら。
 ロルティは唇を噛み締め、思考する。

(だって、いい子じゃなくちゃ。おにいしゃまと一緒に、いられないもん……)

 わがままを言ったり、泣き喚めいたりすればぶたれる。
 ロルティが物心ついた時からいた場所は、そう言うところだ。

 彼女がいつも笑顔でいるように心がけているのは、そうすることでしか自身の身を守れなかったからだ。

「うさぎしゃん。よかったね!」
「きゅう……」
「このリボンをつけてれば。迷子になってもすぐに、うちの子だってわかるよ!」
「むきゅ、きゅう……っ!」

 アンゴラウサギは「迷子になんてならないもん」と全身を小刻みに震わせながら、ピッタリとロルティの身体に寄り添った。

(うさぎしゃんも早く、つらいことを忘れて。元気いっぱいになれると、いいのになぁ……)

 怯える獣を目にするのは、彼女だって苦しい。

 ロルティは少しでも震えが止まるようにとアンゴラウサギを気遣いながら、父親が姿を見せるまで優しく全身を撫でつけていた。
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