異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!

「ロルティ」
「パパ! ありがとう!」

 姿を見せたジェナロから名前を呼ばれた娘は、満面の笑みを浮かべて父親にお礼を告げた。
 彼はその瞬間に瞳を潤ませると、唇を噛み締めながら声を絞り出す。

「ああ……」
「どうしたの? わたし、お礼を言っちゃ、駄目だった!?」
「ち、違う。これは、嬉し涙だ。俺は……ロルティに喜んでもらえて……。とても、幸せだ……」
「パパ……」

 父親はこうして時折、涙脆くなる。

 ロルティはそのたびに驚くが、涙が瞳に滲む理由を耳にしてほっと一息つく。
 その繰り返しだった。

「わたしが寝ている間に、みんなの分を作るなんて、すごーい! パパって、魔法使いなの?」
「……いや。俺が魔法を使えたら、もっと早くにロルティを神殿から助け出せたはずだ」
「むぅ。そっかぁ……」

 ロルティが残念そうに呟けば、愛娘の元まで歩み寄ってきた父親は彼女の頭の上に乗せていたリボンが歪んでいることに気づき、直してやる。

 その様子を妹の隣で兄が見つめ、3人の間には穏やかな時間が流れた。
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