異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 スリスリと頬を使って身を寄せた獣に、ロルティはパッと表情を明るくさせて小さな身体を抱き上げた。

「うさぎしゃん! ありがとう!」
「きゅうん……」

 ロルティが喜べば、アンゴラウサギも嬉しくなるのだろう。

 全身を震わせていた獣が甘えたような鳴き声を響かせたのを見計らい、静観していた父親が声をかける。

「ロルティ。今なら直接騒いでいる奴に、文句を言えるが……」
「父さん。それは……」
「俺が責任を持って守る。問題はない」
「ならいいけど……」

 ロルティは神殿から命を狙われている身だ。

 できることなら不用心にも外を出歩くのは避けるべきだが、愛娘を悲しませた男に文句の1つくらい言ってやる機会を作らなくてどうするのかと考えているのかもしれない。

「わたし、行きたい!」

 父親に提案されたロルティは、元気いっぱいに彼とともに自宅を出ると宣言した。

 すると部屋の中でじっとしていたいアンゴラウサギが、彼女の腕の中から小さな足を動かしてジュロドの元へと向かう。
 どうやら留守番していると言いたいようだ。

「ジュロド。そいつを頼む」
「むきゅう……」
「はいはい。わかったよ。ロルティのこと、傷つけるようなことがあれば……父さんでも容赦はしないから」
「ああ」
「おにいしゃま! 行ってきまーす!」

 兄に笑顔で手を振った彼女は、父親に抱きかかえられ公爵家の外へ出た。
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