異世界から本物の聖女が召喚されたので、聖女見習いの幼女は不要のようです。 追放先でもふもふとパパに溺愛されているので、今更聖女になんてなりません!
 公爵家の敷地へ歩みを進めるためには、ロルティの背丈で計算すると数10倍も高い鉄格子を乗り越えなくてはならない。

 その門の前で騒いでいた男は、幼子を抱きかかえた当主の登場に目を丸くした。

「ハリスドロア公爵! やっと姿を見せたか……!」

 男はやっと話のできる人間がやってきたと瞳を輝かせたが、ジェナロは彼と会話をするためにやってきたわけではない。
 愛娘の意志を直接伝えるために彼女を連れてきた付き添いだ。

「パパー。あの人ー?」
「ああ。そうだ」
「な、子ども……?」
「わたし、話しかけてもいーい?」
「もちろん」
「やったー!」

 ロルティはニコニコと笑顔を浮かべると、彼女がハリスドロア家の娘であることを知らない男に話しかけた。

「おじしゃん」
「お、俺はまだ20代だ!」
「あのね。うさぎしゃんの毛は、売らないよ!」
「一体なんの権限があって――!」
「貴様は俺の娘よりも、身分が高いのか?」
「は?」

 先程まで大騒ぎしていたはずの男は、あり得ない単語を耳にして固まった。
 ここが勝負の時だとばかりに幼いながら悟った彼女は、元気よく男性に告げた。
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