【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「彼女は、ここの魔法研究部の事務官のシンディ・ヘロンさん。男所帯の雑務を一手に引き受けてくれる女神のような存在です」
「ディオケル大尉。褒めても何も出ませんよ。はじめまして、シンディ・ヘロンです。ここ、マーレ少将が投げやりにしている部門ですから、事務官になりたい人も少なくて……ですが、お給金がいいんですよ」
 口元に手を当てて、アンヌッカにだけ伝えるべき内容だったのだろう。だが、声が大きいため、周囲にだだ漏れである。
「ヘロンさん。あまり、カタリーナさんを脅さないでください。本当にこの部門……マーレ少将から睨まれていて、やりにくいんですから」
「あら? だけど、マーレ少将さえ適当にあしらえば、仕事は座っていればいいから楽だと言っていたのは、どこの誰かしら?」
 ちょいちょいと肩を叩かれたアンヌッカが振り返ると、セールだった。
「実はあの二人、付き合っているんです」
「え?」
「しーっ。声が大きいです」
「ご、ごめんなさい」
 アンヌッカはおもわず口を両手で塞ぐ。
 イノンとシンディは恋人同士。
 アンヌッカは忘れないようにしようと、心の中に記録する。
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