【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
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 ライオネル・マーレは、王国軍に所属する軍人である。階級は大佐。彼が相手にするのは主に魔獣で、魔獣が現れたと聞けば部下を率いて討伐へと向かう。
 魔獣討伐に魔導士は必要不可欠と言われているが、ライオネルにとって彼らは邪魔な存在でしかなかった。
 魔獣が口から炎を吐いたとしても氷の粒を投げてきたとしても、それを避ければ問題ない。動きの鈍い魔導士など不要。
 しかし、魔獣討伐には魔導士を連れていけと、上官は言う。それは魔獣が予想外の行動をとったときに、魔導士の魔法が役に立つからだそうだ。予想外の行動というが、魔獣の動きは分類化できる。それさえわかっていれば何も問題ない。
「……というわけでだ。また、苦情がきているんだよ」
 バサッと書類の束を机の上に置いたのは、この国の王太子であるユースタスだ。
「わざわざ俺をこんなところに呼び出して、言いたいことはそれか?」
「こんなところって、相変わらず失礼な男だな」
 ユースタスは大げさに肩をすくめて息を吐いた。
 ライオネルが呼び出されたのは、ユースタスの執務室である。茶系統で整えられたこの部屋は、特に派手でも地味でもない。目の前にいる無駄に整った顔立ちの彼の雰囲気に合っているから憎らしい。
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