【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「みなさん、短い間ですがお世話になりました」
 その言葉に室内にいた全員が立ち上がり、いつの間にかシンディの手には花束まである。
「リーナ。今までありがとう」
「こちらこそ、貴重な魔導書に触れる機会をくださってありがとうございます」
「だから、そういうところなのよね」
「え? 何が、ですか?」
「リーナのいいところ」
 シンディが泣きそうな顔をしながらも無理矢理笑顔を作っているのを見ると、アンヌッカも胸が熱くなってきた。
 軍に派遣されると聞いたときは緊張と不安でいっぱいだったが、実際、仕事を始めてみればそんな不安など消し飛んで、楽しさが勝った。それに、初めてみるゾフレ地区の古代文字には心が躍った。
 魔導書と向かい合えば、ここがどんな環境だなんてすっかりと忘れてしまう。
 ただ、一日の仕事を終えてライオネルに日誌を出すときだけは、軍にいるんだなと実感した。
「本当にみなさん、ありがとうございます」
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