【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 シンディから受け取った花束を両手に抱え、アンヌッカはぺこぺこと頭を下げた。
「リーナ。マーレ少将にも挨拶に行ったほうがいいわよ」
 シンディが耳元でこそっと伝えてきたので小さく頷いた。
「では、マーレ少将の執務室に行って参ります」
 花束は自席の机の上に置き、ライオネルの部屋へと向かう。
「最後だから、ぎゃふんと言わせてきなさい」
 片目をつむってそう言うシンディだが、彼女がいてくれたおかげで助かったところはたくさんある。
 特にライオネルをぎゃふんと言わせたいことはないのだが、シンディにそう言われるとその気になってしまうのが不思議だ。
 シンディの言葉に背を押されるようにして、研究室を出た。
 ――トントントントン。
 こんな時間に彼の部屋に足を向けたのは初めてだ。もしかしたら、不在かもしれない。時間を考えなかったことを反省する。
『開いている』
 中から彼の声が聞こえたことで、ほっと胸をなでおろす。
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