【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「まぁ、そういうわけだからさ、君。結婚してくれない? それが相手の女性ね。きっと、君も気に入ってくれると思うんだよね」
 ライオネルは黙ってユースタスを睨みつけた。今の話の流れで結婚をすすめられるとは思ってもいなかったし、どこをどうとればそのような話になるのか理解できない。
「メリネ魔法研究所。知ってるよね?」
 最近、魔獣討伐に同行する魔導士は、国家魔導士よりもそういった民間の研究所に所属する魔導士のほうが多い。
「あぁ。なんだ、そこからも苦情か?」
 民間魔導士らは自分の立場をわかっているから、ライオネルとしては扱いやすい部類に入るのだ。何もするなと命じれば本当に何もしない。余計なことをするなと言えば手出しをしてこない。
 我こそはとしゃしゃり出てくるような国家魔導士たちよりもありがたい存在だ。
「違う。ここは、金のためと割り切っている奴らだから、金さえ払えば文句は言わない。そこを渋ると、やられるけどな。って、縁談だと言ったじゃないか。この釣書のどこが苦情に見える? 老眼でも始まったんじゃないのか?」
 聞きたくもない結婚という言葉から目をそらしたというのに、ユースタスはまた話を戻してきた。
「最近、メリネ魔法研究所が力をつけてきていてね。実力だけでなく、資金面でもね。このまま放っておけば、国家魔導士たちも飲み込まれるんじゃないかって、上が気にしている」
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