【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「言っただろう? これは、極秘の魔導書なんだ。かかわっている人間が増えれば増えるほど、情報の統制は難しくなる。おまえはまだここに来たばかりで、ここでの人付き合いが浅い。それよりも、おまえが秘密を守る人間だというのは、俺も知っているし、過去の実績からもわかっているつもりだ」
 そうやって評価してもらえるのは素直に嬉しい。それがアンヌッカも知らぬ間に顔に出ていたようで、ほっと口元を綻ばせていた。
「この案件、引き受けてもらえるか?」
 ライオネルがやさしく微笑んでいるように見える。また、ドキリと心臓が大きく音を立てた
「は、はい。もちろんです。できれば、その暗号解読もやってみたいくらいです」
「そういう前向きな姿勢は、嫌いじゃない。では、頼む。机はそこを使っていい」
「え?」
 今のライオネルの話しぶりから察するに、アンヌッカはこの部屋で魔導書の解読をするということになるのだが。
「もしかして、この部屋で?」
「そうだ、何を驚いている?」
「い、いえ」
 驚いているわけではなく、気まずいのだ。ライオネルと二人きり。いや、隣の部屋には侍従らが控えているから厳密には二人きりではない。
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