【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 同じ軍の仕事だというのに、直接ライオネルから指示をもらうとなれば、やはり緊張はする。
 二十ページの本だから、五日とかからぬうちに現代語に直せるだろう。だが、問題はその後だ。
「へぇ、励んでいるようだね」
 アンヌッカがライオネルの執務室で魔導書の解読に励み始めると、この部屋には王太子ユースタスがやって来ることがわかった。しかも、頻繁に。
 そのたびにライオネルが適当なことを言ってあしらおうとする姿は、見ていて少し面白い。二人のかみ合っているようでかみ合っていないような会話とか。
「リーナ、進捗はどうだい?」
 そしてユースタスは、カタリーナとしてここにいるアンヌッカに対して、そうやって親しげに言葉をかけるのだ。
「はい。現代語にできたのは、半分ほどですね。明後日には終わると思います。ですが、現代語に直してからが本番なんですよね」
「そうだね。だが君は、料理と魔法が似ていると言ったのだろう? ライオネルが面白がって私に教えてくれてね」
 彼がそのような話を覚えていたのは意外だったし、ましてそれを他人に伝えるというのも予想外のことだった。
「そういった考えは大切でね。似ていると感じるのは、そこに何かしら共通点があるからなんだよ。その共通点を探れば、そこから見えてくるものはあるだろう?」
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