【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「リーナ。君、なかなか鋭いね。でも、そういうことはライオネルの前で言わないほうがいいよ?」
「申し訳ありません。失言でした」
 ちっとライオネルは舌打ちをする。
「でも、リーナの言うとおりだね。ここは最近まで使われた形跡がある。とにかく我々が使った痕跡は消しておこう。その後の話は部屋に戻ってからだ。誰かがここを使っているのであれば、長居するのは危険だからね」
「はい。できれば、もう少しあの辺の魔導書とか記録簿とか、見てみたい気もしたのですが」
 アンヌッカがあの辺と示したのは、もちろん三百年前、百年前の資料だ。
「はは、リーナらしいね。すべてが解決したら、あの辺の資料は好きに見ていいよ」
「本当ですか?」
「その代わり、君にも協力してもらうけどね」
「もちろんです」
 アンヌッカが明るく答える。
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