【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 マーカスとプリシラの結婚は恋愛結婚であるだけに、余計にアンヌッカが不憫だと思うのだろう。
「お兄様、わたしは気にしておりません。それよりもお父様……」
 マーカスから手紙を奪い取り、先ほどから黙って項垂れているアリスタの前に、トンと書類を並べた。
「ライオネル様から、結婚式の日取りの連絡までありました。二か月後ですって。こちらの準備に取りかかりたいのですがよろしいでしょうか?」
 愛のない結婚だと言い切っただけのことはある。
 結婚式の日取りはすでに決められ、王城の隣にある礼拝堂で行うとまで書かれていた。それまでに必要なものを準備するようにと。
 結婚式に必要なものといえば、真っ白いドレスだろう。
「まぁ? 二か月後? まったく、ドレスを仕立てるのにどれだけ時間がかかるか、知らないわけではないでしょうに。仕方ないわね、急いでドレスの準備をするわよ」
 なぜかプリシラが張り切っている。
「アン、何を驚いているの? 結婚式は女性にとって一生の思い出よ。相手がどうであれ、うんと素敵なドレスを準備して、ぎゃふんと言わせてやりましょう。腕が鳴るわね」
 アンヌッカはその言葉に励まされた。
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