【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「明かりはどうやってつけるのかしら?」
 さすがに手持ちの明かりだけでは心許ない。上に掲げれば天井から浴室内を照らすランプが見えた。
「奥様。これでは?」
 ヘレナが壁についている明かりのボタンを見つけた。それを押すと、浴室内が明るく照らされる。
「廊下の明かりもつけたいわね。この屋敷の明かりは、すべて魔法具のようね」
 これで浴室とアンヌッカの部屋が明るくなったわけだが、そこを行き来する空間がまだ暗い。
 ライオネルは屋敷で自由に過ごしていいと手紙に書いてきたのだ。となれば、夜間に屋敷中をびかびかに光らせても文句は言わないだろう。
「奥様。廊下にもありました」
 ヘレナの言葉と同時に、廊下も明るくなる。
「とりあえず、これだけわかればなんとかなるわね。あとは、明日。明るくなってから屋敷内を見て回りましょう。ヘレナも疲れたでしょう?」
 ヘレナには廊下を挟んだ向かい側にある部屋を当てた。
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