【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「だから、悩んでいたのだよ」
ようは誰を軍に派遣するか。
アンヌッカを派遣したいところだが、マーレ少将の夫人となった彼女では体裁が悪い。というよりも、ライオネルが反対するだろう。
顔を合わせたこともないが、マーレ夫人が軍の研究所で魔導書の解読をしているとなれば、彼の肩身も狭くなるにちがいない。
「……あっ」
「どうした? アン」
マーカスが驚いた様子でアンヌッカをじっと見つめてくる。その瞳には驚き以外の期待も込められているように見えた。
「考えてみたら、旦那様とはお会いしたことがないのです」
「あ、あぁ。そうだな」
今度はマーカスからは同情の色がにじみ出てきた。
「つまり、わたしがマーレ夫人だというのは、名乗らなければわからないということですよね? 実際、あの結婚式に出席されたのは、王太子殿下のみ。王太子殿下とも顔を合わせたのはほんの少し。わたしだって花嫁の化粧をして衣装を着せられておりましたから、普段のわたしとは違うとは思うのですが……」
ようは誰を軍に派遣するか。
アンヌッカを派遣したいところだが、マーレ少将の夫人となった彼女では体裁が悪い。というよりも、ライオネルが反対するだろう。
顔を合わせたこともないが、マーレ夫人が軍の研究所で魔導書の解読をしているとなれば、彼の肩身も狭くなるにちがいない。
「……あっ」
「どうした? アン」
マーカスが驚いた様子でアンヌッカをじっと見つめてくる。その瞳には驚き以外の期待も込められているように見えた。
「考えてみたら、旦那様とはお会いしたことがないのです」
「あ、あぁ。そうだな」
今度はマーカスからは同情の色がにじみ出てきた。
「つまり、わたしがマーレ夫人だというのは、名乗らなければわからないということですよね? 実際、あの結婚式に出席されたのは、王太子殿下のみ。王太子殿下とも顔を合わせたのはほんの少し。わたしだって花嫁の化粧をして衣装を着せられておりましたから、普段のわたしとは違うとは思うのですが……」