【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
「こつさえ覚えてしまえば簡単です。みんなで古代文字を勉強しましょう」
 魔導書の解読が目的であったのに、アンヌッカはそう口にしていた。
 イノンは不意をくらったようにきょとんとしている。だが、すぐに我に返って「そうですね」と言う。
「カタリーナさんは、面白い方ですね。見た目とこうギャップがあるといいますか……もっとこう、お堅い感じのイメージがありましたので」
 そうだった。いつものアンヌッカではなく、ここにいるのはカタリーナ・ホランという女性なのだ。
 だが、もう手遅れだろう。結局、他の誰かを演じるとか、アンヌッカにとってはどだい無理な話なのだ。
 となれば、見た目だけはなんとか誤魔化すことにして、あとは普段と変わらないようにしたほうが、ぼろがでなくていいだろう。
「よく言われます。では、早速始めさせていただきますね」
 見たことのない魔導書でアンヌッカは早くこれを読みたかった。
 頬ずりしたいくらい愛おしい魔導書だが、やたら触りまくってもいけない。古代文字で書かれた魔導書は貴重な資料。しかも、禁帯本とのことでこの研究室から出せないために、アンヌッカがやってきたのだ。
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