【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
『入れ』
 先ほども聞いたライオネルの声。相変わらず不機嫌そうだ。
「失礼します」
 堂々と歩き、ライオネルの前に立つ。
「日誌をお持ちしました」
「見せてみろ」
 威圧的な態度に、アンヌッカは苛立ちを覚える。
 なぜこの男はこんなにも偉そうなのか。いや、実際に偉い人なのだから仕方ないのかも知れない。
 だけどアンヌッカは軍の人間ではない。頼まれて仕事をしているというのに、労いの言葉一つもかけられないのか。
 そんな思いを胸にしまい込み、黙って日誌を手渡した。
 それを受け取ったライオネルはすぐに中身を確認する。
「……ん? おまえが見ているのは、ゾフレ地区の魔導書だよな。なぜここにハイネ地区が出てくる?」
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