【電子書籍化】出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
 はっきりいって、ライオネルは魔導書にも古代文字にも興味がない。むしろ魔法が嫌いだ。だから魔獣討伐ですら魔導士の同行を拒否するくらいだというのに。
 そしてイライラする原因のもう一つ。
 間違いなく、人の執務室で勝手にくつろいでお茶を飲んでいるユースタスだろう。王太子という身分を利用して、こうやって好き勝手ライオネルの部屋へとやってくる。
「どうしかしたか? そんなに私を見つめて。奥さんのことでも恋しくなった? いいんだよ、帰って。君だって新婚だろう?」
「うるさい。ここは俺の部屋だ。定刻の鐘はとっくに過ぎている。おまえこそ帰れ」
「ひどいな。何度も言っているだろう? 私は君の上官。私は君の雇い主。文句があるなら辞めてもらってもいいんだよ?」
 ユースタスがわざとそう言うのは、ライオネルが軍を辞めないことを知っているからだ。
 ちっと舌打ちをしたライオネルは、書類に視線を落とす。
 魔獣討伐から戻ってきて、待っていたのはこの書類の山だった。
 地位が上になればなるほど、現場に立つよりもこういった書類仕事が多くなるのは仕方ない。そしてライオネルも、書類は書類でも魔獣に関する書類であれば苦にならない。それは魔獣の名称から始まり、特徴、分類、討伐の仕方などが書かれたもの。魔獣討伐の内容を資料としてまとめることで、次の討伐に生かすのが目的だからだ。
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