【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 永真先生がチラッと私を見た。

「お、おはようございます!」

「……スーツで来たんだ」

「え、はい一応……」

 私が持っているスーツは学生時代から着ているリクルートスーツしかない。
 OL時代は制服があり、医局ではオフィスカジュアルだから、スーツを着る機会なんてなかったのだ。

 さすがにリクルートスーツに白のブラウスはないと思い、ブラウスだけ淡いピンクのリボンタイにしてみた。

 しかしどうやっても、この学会会場の中で、私1人違和感がある。
 女性MRさんのこなれ感が羨ましい。
 せめてパンツスーツだったらよかったのかな。

 そう思っていたので、スーツを指摘されると少し恥ずかしかった。

「……いいな」

「え? 何か?」

「いや、何も……」

 ボソッと何か言われた気がしたが、聞き取れなかった。
 しかし隣にいる森下先生はなぜかお腹を抱えて笑っている。やっぱり変なのかな。

「うるさいですよ」

「いや……クックッ……最高だな。
目の前でこの展開が見られるなんて」

「笑ってないで早く貼りましょう。
シンポジウムが始まります」

「ああ。あ、じゃあ汐宮先生はあっちの金山先生を手伝ってくれるか? 
こっちは伊原さんに手伝ってもらうから。
その方がいいだろう?」

 何故かそこで森下先生がウインクする。

「…………分かりました」

 少し離れた場所にいる金山先生を見つけ、永真先生は歩いていった。
 その近くでは、原田先生が研修医に手伝ってもらいながらポスターを貼っている。

 こっちも作業を始めないと!

「あの、私押さえましょうか?」

「うん。頼むよ」

 ポスターを貼りながら、森下先生がまた思い出し笑いを始めた。

「どうしたんですか?」

「いや、面白いなーと思って。
金山先生は汐宮先生の一個上で、独身なんだよ」

「はぁ……」

「伊原さんがあっちを手伝うより、妻子持ちの俺を手伝う方がマシだろうと、俺があっちへ振ったの。
彼は的確に理解したようだ」

「な……まさか……」

「多分、本当は君の傍を離れたくなかったんだと思うよ」

「……」

「あれ、貼り終えたらすぐに戻ってくるよ。間違いない」

 森下先生の言う通りだった。
 こちらがまだ半分も貼り終えていないのに、永真先生は手伝いを終えて戻ってきた。

「叶恋、俺がやる」

「あ、すみません、遅くて……」

「問題ない」

「クックック……」

 森下先生はずっと笑っていた。
 もう、恥ずかしすぎる。
 本当に私の傍にいようとしてくれているのかしら。
 それとも偽装恋人関係を装うため?
 私には判断がつかなかった。
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