【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 無事ポスターを貼り終え、写真撮影も済ませ、メイン会場へ向かう。

 1000人収容できるというメイン会場には、すでにたくさんの観客が入っていた。

 舞台上には、大きな紙に印字された各大学の先生方のお名前が。全て教授か大きな医療センターの院長のどちらかだ。
 司会席には最高学府の名誉院長の名がある。
 それだけ大きなシンポジウムということだろう。

 私たちは観客席後方の一角に席を取った。

「一人で来たのか?」

 隣の席になった永真先生が話しかけてくる。
 
「はい。皆さんとは新横浜で待ち合わせして、シャトルバスで来ました」

「朝早いから大変だっただろう。
叶恋が来るとわかっていたら、昨日の夜一緒に連れてきたんだが」

「え」

 ドクターでもないのに、前日入りなんてありえないでしょう!

「帰りは明日だろう? 
新大阪に車を置いてるんだ。送るよ」

「……あ、ありがとうございます。
先生も明日帰るんですか?」

「ああ、あいつら日曜日運動会だろう?」

「えっ! どうしてそれを……?」

「お母さんに聞いた。双子も来てくれって」

「聞いてない……」

 まさか、運動会にまで来てくれるとは思いもしなかった。
 いつの間に誘ってたのよー!
 お母さん、一言言ってよ!

「うちにディレクターズチェアが1つあるんだ。
もらい物だが新品だ。
それならお父さんも快適に観戦できるだろう?」

「それはもちろん……いいんですか?」

「使う予定もないし。
席取りも俺がすることになっているから、先に持って行っておくよ」

「は、はい……ありがとうございます……」

 この様子だと、うちの母と何度もやり取りをしているの? いつの間に……。

 ん? なんだか視線を感じる?

 ハッと周りを見渡すと、医局の先生方からの生暖かい視線を感じた。

 え、今のやり取り、見られてたの?

 どうやら皆さん、全部聞いていたのにニヤニヤ笑うだけで何も言ってこないらしい。

 私としては何かツッコんでくれた方が気が楽なんだけど〜。
 しかし誰も私たちに話しかけてくれることはなかった。


 当たり前のことだけどシンポジウムの内容は、私には難しすぎた。

 いつの間にかウトウトとしてしまっていた私は、休憩時間になって目を覚まし驚いた。

「起きたか」

「………………ひえっ……えっ?」

「よく寝てたな」

「あ。…………ご、ご、ごめんなさい!」

 隣にいた永真先生の肩にもたれて爆睡していたのだ。

「いや、これを叶恋に理解するのは無理だろう。
寝て当然だ」

「伊原さん、朝も早かったし、真面目に聞く必要なんてないんだよ。ほら、研修医なんてまだ寝てる」

 森下先生の言葉に振り返ると、確かに後ろの席の研修医はまだまだ夢の中にいるらしい。口をパカンと開けて気持ち良さそうに寝ている。

 それにしても恥ずかしいのには変わりない。

「すみません……」

「午後も寝てていいんだぞ」

「まさか! 永真先生の発表はちゃんと心して見させていただきます!」

 どの口が言うんだ、爆睡していていたくせに、というニュアンスで「フッ」と笑った永真先生が、私の頭をポンッと撫でた。

 信じてないな? 絶対寝ないんだから!
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