【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「じゃあ、僕たちはこれから中華街に行こうと思ってるから」
「え?」

 パネルディスカッションが終わり、全員で会場を後にした。
 森下先生を筆頭に、ほかの先生方も完全に仕事は終わりという雰囲気になっている。

 『じゃあ、僕たちは――』って、私は連れて行ってもらえないの?

「ここにいたら汐宮先生が出てくるはずだよ。
伊原さんは待っててあげなよ」

「あ……」

「彼も今日はもう終わりのはずだから、デートすればいい」

「デ……ええっ!?」

「せっかく学会に来てるんだからたまにはいいだろう。中華街でもいいし、さっき見えた観覧車に乗るなんてのもありだな。二人で楽しんでおいで」

 そう言って、きれいなウインクを決めた森下先生は、ほかの先生方と会場から出て行ってしまった。
 
「どうしよう……」

 ここで待っていたらと森下先生は言ったけど、本当に会えるのかしら?

 メイン会場の入り口付近で、どうしたものかとうろうろしていたら、メッセージを受信した。

『司会の先生に挨拶したら会場を出る。
 10分後に1階インフォメーションで』

 永真先生からだった。
 良かった……。来てくれるんだ。

 地元から離れたこの横浜で一人になっていると、少し心細かった。

 早く来てほしい。
 早く会いたい……。

 さっきまで舞台の上で堂々とした発表をしていた永真先生と、待ち合わせしているのだと思うとドキドキする。

 インフォメーション前に移動しながら、ふたりっきりでどこかに出かけるのは、あの仕切り直してスイーツを食べに行った時以来だと思い出す。

 それも結局は、双子にチョコレートケーキを買うのが目的みたいなお出かけだった。

 これが先生方の言うようなデートなのかわからないけど、まさか学会先で2人きりで過ごせるなんて思ってもみなかったから嬉しい。

 中華街か……。私も行ってみたい。

 待ち時間で、さっき研修医の先生が見せてくれた【横浜中華街食べ歩き5選】を検索してみる。

「わー……やっぱ焼き小龍包ははずせないよね」

 カリッと焼かれた熱々の小籠包から、ジュワっと溢れ出すスープを想像すると堪らない。

「おぉ……ハリネズミまん! これも可愛い……」

 美味しそうな可愛いスイーツも沢山アップされている。
 やっぱり絶対に中華街へ行きたい!

 永真先生、一緒に行ってくれるかな。
 デート、できるかな……。

 そう思いながら待っていると、エスカレーターから降りてきた男性と目が合った
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