【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「だいたい、親父さんが倒れたなら、面倒をみるのは娘じゃないだろう? 母親に面倒みさせろよ。
娘の将来も考えずに会社を辞めさせるってどんな親だよ。家に娘を縛り付けて、デートもできないなんてさ、あり得ないだろう?」

「……そんな風に思ってたの?」

 これは……元カレか?
 
「――――さすがに結婚前から相手の親の介護かと思ったら萎えたけど、叶恋が自由になったんなら何も問題はない。俺たち、やり直そう」

「お断りします」

「は? 何言ってるんだよ。お前俺のこと初恋だって言ってたじゃないか。まだ好きなんだろう? 
あの日だって、ちゃんとホテルを取ってたんだぞ。
叶恋にとって初めての夜だと思ったから、思い出に残るようにって考えてやってたんだ。
なのに――」

「――私のことは気にせず、どうぞ理沙ちゃんとお幸せに。
これ以上話すことはないから」

 なんという勝手な奴だ。
 叶恋の家族のことを全く理解しようとしていない最低野郎だな。

 こんな奴に叶恋の初めてを奪われていたかと思うとゾッとする。
 あの時、俺たちが出逢えたのは奇跡だったのかもしれない。

 俺が怒りに震えていると、男が叶恋の肩に両手をかけた。
 
「――――本妻に出来ないが、俺が叶恋を捨てることはない。だから俺たちやり直そう?」

 本妻には出来ないがやり直す?

 この男はどこまで叶恋を侮辱したら気が済むんだ。

 男がかがみ込みんだのを見てこれ以上放置できないと思い、俺は二人の間に割って入った。
 俺の叶恋にキスしようとするなんて――!

 こいつだけは許さない。
 今後二度と叶恋には近づけさせない!
 俺は心に誓った。

 しかし今は叶恋の心のケアの方が大事だった。
 酷く顔色が悪い。
 当たり前か。かつてはあれでも好きだったから付き合ったのだろう。
 とんでもない奴だったが……。

 せっかくの横浜の夜だ。
 叶恋には笑顔でいてほしかった。

 それに、俺自身も今日は覚悟を決めていた。
 今夜、俺たちの関係をハッキリさせると。


 あんな男に、今日という日を台無しにはさせない。
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