【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
横浜の夜
 永真先生が連れてきてくれた遊園地は、ライトアップがとても素敵だった。

 中華街からホテルに着いた時は、もうお別れなのかと寂しく思ったけど、夜はまだ続くらしい。

 二人っきりでいられるのが嬉しくて、ついついはしゃいでしまう。

「先生、見てください! 
ジェットコースターが水の中にドボンって、消えました!」

「あれは消えたんじゃなくて……乗ってみるか?」

「ええっ!?」

「行こう。乗りたいものは全部乗ろう」

 消えるジェットコースターに急流すべり、お化け屋敷にも行って、思いっきり叫んだ。

 閉園間際になって、観覧車に乗り込む。
 たまたま乗り込んだゴンドラは、なんと底が透明のシースルーゴンドラだった。

「こ、これ……めちゃくちゃ怖いんですけど……」

「たしかに透け透けだな。じゃあ座席ばかり見ないで外の景色を見ろよ。遠くを見ろ」

「え、でも……」

 床だけじゃなく、座るところまで透明なのよ? 
 座っているだけでガタガタと足が震える。
 正直どのアトラクションより怖い。
 いままで特に高所恐怖症だと感じだことはなかったのに。

「ハァ……仕方ないな」

 そう言って、私の隣へ移動してきた永真先生が、ひょいと私を持ち上げて膝の上に横向きに乗せた。
 
「ひゃぁ!」

「これならどうだ? 怖くないだろう?」

 確かに座面は透明じゃなくなったけど、違う意味でドキドキしてるよ!

「わ、私、重いからっ」

「全く重くないが」

「で、で、でも……」

 永真先生が私を包み込むように抱きしめてくる。

「ほら、震えが止まった」

「永真先生……」

「もうすぐ頂点だ」

「あ、本当だ…………夜景、綺麗……」

 永真先生のぬくもりに包まれて、やっとまともに外を見ることが出来た。

「叶恋……」

 永真先生と目が合った。
 どちらからともなく、重なり合う唇。
 私たちは、ごく自然にキスを交わしていた。

 夜景を見たのはそこまで。
 底が透明なことも、怖かったことも、全て私の意識の中から飛んでしまった。
 今、感じるのは永真先生だけ――。
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