【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「糸先生! いやー、その節はお見舞いにも来ていただいてありがとうございました」

 声をかけてきてくれたのは、天沢糸先生。
 昨年度の生馬の担任の先生だ。
 ご実家は父と同業者で、お父様は父の修行時代の先輩にあたる。

 そして糸先生は、私の高校の先輩でもあり、会社を辞めて双子の世話と父の介護に専念していた時期に、とても親身になってくれたお姉さん的存在だ。

 父の入院中、お父様と一緒にお見舞いにも来てくださった。

「いえいえ、父も伊原さんのことをずっと心配してたんです。
こんなに元気になられたところを見たら喜びます!」

 いつも元気でパワフルな糸先生は、少しお話するだけでこちらも元気になる気がする。

 父と糸先生が話している横で、私は永真さんに糸先生にお世話になった話をした。

「ところで、叶恋ちゃんいつの間に結婚したの?」

「え、ち、違いますよ?」

「じゃあこちらの方は……」

「汐宮永真と申します。叶恋の婚約者です」

 永真さんがドヤ顔で言った。
 
「叶恋ちゃん婚約したの!? ほんと、いつの間に……」

 そうなのだ。
 昨日、横浜から帰った私たちは、結婚を前提にお付き合いを始めたことを両親に報告した。

 同じように汐宮のご両親にも電話で報告すると、すぐにでも両家で顔合わせを! と言われたのだ。

 そのため急遽運動会の翌日、つまり祝日である月曜日に、両家の両親が顔合わせすることが決まった。

 本当に急展開だ。まだ(仮)が付いているけれど、一応婚約者ということになるのかな。
 なんだかとても気恥しい。

「そっか。叶恋ちゃんも……」

「糸先生……?」

「あ、ううん。それはおめでとうございます! 
素敵な婚約者さんね。
叶恋ちゃんここじゃゆっくりお話できないし、また今度馴れ初めとか聞かせてね」

「はい! ぜひ」

 糸先生が行ってしまった後、永真さんが自らを「婚約者」と名乗ったことで、両親はニヤニヤし通しだった。
 やっぱりとても気恥しい。

 このことで、すっかり直前の話は忘れてしまっていた。

 ◇ ◇ ◇
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