【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
京香さんと話をする
「さあ、何から話しましょうか」

「え」

 どうしてこんなことになっているのだろう……。

 食事も進み、みんなが和やかな雰囲気で談笑し始めたので、私は席を立ち、レストルームへ向かった。
 用を足して、レストルームを出たところで京香さんにばったり出会ったのだ。

 いや、ばったり出会ったというのは少し違う。
 この様子では、私が席を立った後、つけて来たのだろう。
「ちょっとそこに座ってお話でもしない?」と誘われ、今に至る。
 ちょっとお話って……?

 宴会場のエスカレーター付近にあるソファセットに座り、ソワソワしながら京香さんの動向を探る。

 幸い、このフロアは披露宴に出席するお客さんでごった返していて、私たちが何を喋ろうと気にする人はいないだろう。

 でもこんなところで話し込んでいたら、みんな心配しないかしら。

「あ、あの……戻らなくてもいいのでしょうか」

「いいのよ。今人生ゲームが始まったところだから」

「人生ゲーム!?」

 それって、あの昔ながらのボードゲーム?

「うちの旦那様の趣味なの」

「趣味!?」

「あの人、人生ゲームで銀行をするのが好きでね、もう家でもしょっちゅうさせられてるのよ。
汐宮の両親も一真も飽き飽き。
でもお客様がいる時は別。
いつもと違うメンバーならそれなりに楽しめるのよ。
双子ちゃんたちやったことないのね。
興味津々だったわよ。
ご両親も何十年ぶりかしらって言ってらしたわ」

 そりゃそうだろう。たしか昔はうちにもあった気がする。まだ祖母が生きていた頃だ。

 でも双子はきっとボードゲーム自体見たことがないはず。
 こんなところまで持ってきているなんて、よっぽど好きなのね、お兄さん。

「人数が多いし、30分位は時間があると思うの。
その間に、叶恋ちゃんとどうしても話がしたかったから」

 そう言って、京香さんはにっこり笑った。
 ひえっ…………話って、何!?

「何も取って食おうとしているわけじゃないのよ。
でも私たち、話すことがあるわよね?」

「え、えっと……?」

「聞いているんでしょう? 永真と私のこと」

「!!」

 やっぱりその話か……。どうしよう!

「何も言わないってことは知ってるのよね? 
私と永真がほんの少しの間付き合ってたこと」

「…………はい」

「ふぅ…………そうよね。
どういう風に聞いたのかはわからないけど、それは多分全部事実だと思う。
一度は付き合うと言ったのに、私が心変わりしたの。
それも永真の実の兄に」

「……」

「自分でも酷い女だと思う」

 どうやらこの人は、あの酷い話を否定する気はなさそうだ。
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