【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
叔父の第3子の育児も落ち着き、従妹弟を預かることも減った。
それと同時に俺も『クッキングアイドルかれん』を見ることがなくなった。
次にたまたま『かれん』を見たのは、俺が高校に入ってからだった。
高校でもサッカー部に所属していた俺は、キーパーをしていた。
ある日、俺は地区予選の試合中に、ゴールポストに激突してしまったのだ。
気を失ったまま病院に運ばれると、右上腕骨折に脳震盪という診断結果で、数日間の入院を余儀なくされた。
「大変じゃないですか、それ……」
「けがとしては大したことないが、脳震盪でしばらく動けないから3日ほど入院したし、骨折したのは利き腕だった」
体を起こせない上に、利き腕が使えない。
左手では箸も上手く使えないし、痛みと不自由な体に、ベッドの上で悶々としていた。
何もすることがなかったので、テレビを見るとはなしに見ていると、『倫子の部屋』が始まった。
芸能界の重鎮である黒沢倫子が客を迎え入れ、対談するというあの番組だ。
しかし俺はあまり興味がなかったので、チャンネルを変えようとした。
その時だ。テレビ画面に見たことのあるピンクの衣装が映ったのは――。
「ひょっとして……私が『倫子の部屋』に出た時ですか?」
「ああ、何年ぶりかに見たかれんだった。
少し大きくなっていたが、基本的には変わってなかったな」
「ええっ! あれ見てたんですか……。
あの時私は小学6年生だったと思います。
国営・民放の垣根のない他局とのコラボウィークで、Eテレからは私が出ることになったんです。
『未来に繋ぐ』というテーマだったので、他局も私と同年代の子役ばかりが呼ばれていましたね」
「なるほど……それで出ていたのか」
あれは本当に偶然だった。
まさか『クッキングアイドルかれん』が続いているとは思いもしなかったし、『倫子の部屋』で見なければ、一生思い出すこともなかっただろう。
懐かしい思いで見ていると、黒沢倫子がかれんのエピソードを話し始めた。それが左利きの話だったのだ。
「そういえば左利きの話をしましたね。
以前も話しましたが、私は元々左利きでした。
オーディションでも、当然のように左手で包丁を持ってテストを受けました。
事務所に届いた応募の条件に『右利きのみ採用』とか『左利き不可』という記載はなかったんですよ。だから私もオーディションを受けることができたんです。
最終審査が終わって、製作側のトップの方から提案がありました。『右利きに直せるか?』と」
「『直せるか』って……」
直す、ということは、間違っているということだ。
「左利きは間違いじゃないだろう。
古い価値観、いや偏見だな……」
「今となってはそうですね。
でもその頃はまだ左利きが市民権を得てなかったというか……おそらく、左利きの子がオーディションに混じるのは想定外だったんですね」
ほんの少し前まで、古い価値感、偏見、そういうものに縛られていた。
左利きは矯正すべきだと考えている人も多かったのは事実だ。
だが現実に愛する人が、過去のことであっても、偏見の目で見られていたのかと思うとムカつくな。
今からでもその偉いさんをぶっ飛ばしてやりたい。
それと同時に俺も『クッキングアイドルかれん』を見ることがなくなった。
次にたまたま『かれん』を見たのは、俺が高校に入ってからだった。
高校でもサッカー部に所属していた俺は、キーパーをしていた。
ある日、俺は地区予選の試合中に、ゴールポストに激突してしまったのだ。
気を失ったまま病院に運ばれると、右上腕骨折に脳震盪という診断結果で、数日間の入院を余儀なくされた。
「大変じゃないですか、それ……」
「けがとしては大したことないが、脳震盪でしばらく動けないから3日ほど入院したし、骨折したのは利き腕だった」
体を起こせない上に、利き腕が使えない。
左手では箸も上手く使えないし、痛みと不自由な体に、ベッドの上で悶々としていた。
何もすることがなかったので、テレビを見るとはなしに見ていると、『倫子の部屋』が始まった。
芸能界の重鎮である黒沢倫子が客を迎え入れ、対談するというあの番組だ。
しかし俺はあまり興味がなかったので、チャンネルを変えようとした。
その時だ。テレビ画面に見たことのあるピンクの衣装が映ったのは――。
「ひょっとして……私が『倫子の部屋』に出た時ですか?」
「ああ、何年ぶりかに見たかれんだった。
少し大きくなっていたが、基本的には変わってなかったな」
「ええっ! あれ見てたんですか……。
あの時私は小学6年生だったと思います。
国営・民放の垣根のない他局とのコラボウィークで、Eテレからは私が出ることになったんです。
『未来に繋ぐ』というテーマだったので、他局も私と同年代の子役ばかりが呼ばれていましたね」
「なるほど……それで出ていたのか」
あれは本当に偶然だった。
まさか『クッキングアイドルかれん』が続いているとは思いもしなかったし、『倫子の部屋』で見なければ、一生思い出すこともなかっただろう。
懐かしい思いで見ていると、黒沢倫子がかれんのエピソードを話し始めた。それが左利きの話だったのだ。
「そういえば左利きの話をしましたね。
以前も話しましたが、私は元々左利きでした。
オーディションでも、当然のように左手で包丁を持ってテストを受けました。
事務所に届いた応募の条件に『右利きのみ採用』とか『左利き不可』という記載はなかったんですよ。だから私もオーディションを受けることができたんです。
最終審査が終わって、製作側のトップの方から提案がありました。『右利きに直せるか?』と」
「『直せるか』って……」
直す、ということは、間違っているということだ。
「左利きは間違いじゃないだろう。
古い価値観、いや偏見だな……」
「今となってはそうですね。
でもその頃はまだ左利きが市民権を得てなかったというか……おそらく、左利きの子がオーディションに混じるのは想定外だったんですね」
ほんの少し前まで、古い価値感、偏見、そういうものに縛られていた。
左利きは矯正すべきだと考えている人も多かったのは事実だ。
だが現実に愛する人が、過去のことであっても、偏見の目で見られていたのかと思うとムカつくな。
今からでもその偉いさんをぶっ飛ばしてやりたい。