【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 退院してからも、毎週火曜日は必ず『クッキングアイドルかれん』を見たし、骨折が治って部活に戻ってからは、録画してまで見るようになっていた。
(この録画で、母親にバレたんだよな)

「最初は『こいつすごいな』『今日も頑張ってるな』って、妹を応援するような気持ちで見守っていたと思う。
だがそれがだんだん執着になって、可愛いと思うようになった……」

「――!」

「あ、誤解するなよ? 俺はロリコンじゃない! 
ただそういうバックグラウンドを含めて、頑張っている姿が可愛いと思ったんだ。
それに……聞きたくないかもしれないが、京香に興味を持ったのも、あいつがピンクばかり着ているからだった。
その頃もまだ俺にとっての基準は……その……かれんだったから」

「永真さん…………じゃあ推しのカラーって、私の衣装の色だったの?」

「……まぁ、そういうことだ」

 そこまで言うと、我ながら変態のように聞こえるのだが、叶恋は引いているだろうか。

 ベッドに座る叶恋をチラッと見ると、顔を真っ赤にしている。
 これは、照れているのだろうか。

「し、仕事で忙しくしている両親が、私の番組をとても楽しみにしてくれていたんです。
もちろん、いつも撮影に付き合ってくれた祖母もですね。
頑張ってると喜んでくれるし、いっぱい褒めてもらえます。
あの頃はまだ子供だったから、家族に褒められるのが嬉しかった。
そんなめちゃくちゃ単純で子供っぽい理由だったんです、頑張ってたのは……」

 そう自嘲気味に言いながら「でも、テレビの向こうで、頑張っているところを見てくれている人がいたんだと思うと、嬉しい……」と、大人になったかれんは微笑んだ。
 
 『クッキングアイドルかれん』の最終回で初めて番組が終わることを知った俺。
 その後どこを探しても、かれんの行先はわからなかった。

 テレビの画面越しだが、いつも会えていたかれんに突然会えなくなって初めて、俺はかれんに恋していたのだと気づいた。

 だが気づいたところでどうしようもない。
 番組が続いていたとしても、相手は芸能人だ。
 結局のところ、傍から見ればただのファンでしかない。住む世界が違うのだから。
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