【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
上司による謝罪
 横浜の学会から驚くほどのスピードでいろいろな出来事があった。

 やっと、お互いに想いを通わせることがてきたと思ったら、すぐに両家の顔合わせになって、今では挙式の予約まで完了している。

 それまでに引越しと入籍というイベントもあり、年末の結婚式に向けてやることが山積みだ。

 まさかこんなに早く結婚が決まると思わなかった。
 一つ一つ幸せを噛み締める時間すらなかったけど、私は今とても幸せだ。

 仕事が終わると永真さんの家に寄り、簡単に食べられるものを用意したり、時間が合う時は一緒に食べたりもしている。

 先週末には伊原家で一緒に鍋を囲み、家族団欒の時を楽しんだりもしていた。

 それも全ては永真さんのおかげだ。
 私には得難い人だと思う。


 ◇ ◇ ◇

 
 入籍を目前に控えたある日、院内回りをして医局へ戻ろうとすると、1人の女性に声をかけられた。

「伊原さん……?」

「え……」

 この人、どこかで会ったことがある……。
 誰だっけ?

「イシハラの松浦です」

「あ、松浦課長!」

「ホッ……良かった、覚えていてくれてたのね」

 松浦課長はイシハラのMRだ。確か営業3課の課長さんで、陽介の直属の上司だったはず。

「ご無沙汰しています。あの……?」

「イシハラを辞めてここに就職していたのね」

「は、はい。父の看病のためにイシハラを退職しまして、9月からここでお世話になっています。
松浦課長はこちらに……?」

 ここの担当は陽介のはず。
 上司の松浦課長が来られる案件でもあったのかな。

「……伊原さん、今少しだけお時間いただけないかしら。10分、いえ5分でいいの」

 松浦課長は、ママさんMRとしてイシハラの中では有名な和風美人。

 歳の頃はおそらくうちの両親と同じくらい。
 きめ細やかな対応と温かみのある笑顔で社内外問わず人気があり、イシハラで一二を争うトップセールスだ。

 そんな松浦課長が私になんの話があるのだろうか。
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