【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
「自転車はどうしましょう?」

「あ」

 自転車はこのマンションのシールを貼ってからじゃないと、駐輪場に置けないんだっけ。

「すみません、確認してからになるので、後回しでもいいですか? 
あ、でも邪魔ですよね……」

「大丈夫ですよ。おそらくシールを貼らないといけないんですよね」

 さすがは引越し屋さん。
よくわかってらっしゃる。

 自転車は永真さんに確認することにして、私は先に7階へ上がることにした。

 7階に着くと、1つしかない住戸の玄関ドアが開き、永真さんが出てきた。

「あ、永真さん! 自転車なんですけど……」

 そう言いかけた私の腕を掴んで、ドアの中へ引き込み、バタンッと閉めてしまった。

「え? あの……んんッ!?」

 永真さんは玄関ドアに私を押し付け、口付けてきた。
 切羽詰まったように、性急なキス。
 差し入れられた舌が私の舌を絡め取り、チュウっと吸い上げられる。

「んっ……ふぁん……」

 キュッと下腹部が疼く。
 今はこんな事をしている場合じゃないのに、思わずその先を求めてしまいそうになる。

「……ハァ……もう、どうしたんですか?」

「俺の奥さん」

「え?」

「そう呼ばれてただろう? 
叶恋が俺の奥さんになったんだと思うと、堪らなくなった」

「……あ、さっきの聞こえてたんですか!?」

 どうやらインターフォンのスピーカーが切れてなくて、さっきの引越し屋さんが言った『奥さん』という言葉が、聞こえていたようだ。

「ちょっと恥ずかしいけど……でも嬉しかったです」 

「フッ……今日から、ずっと一緒だな」

「……はい。末永く、よろしくお願いしますね、旦那様?」

「ウッ……だ、旦那様……。その上目遣い、反則だ。今すぐベッドに――」

 ピンポーン

「……」

「……旦那様? それは、夜のお楽しみということで、今は引越しです」

「……ハァ……わかったよ」

 ピンポーン ピンポーン

「だぁっ! はいはい出ますよ! ……叶恋、今夜は寝かさないからな」

「なっ……んッ」

 最後にもう一度私にチュッと口付け、永真さんはドアを開けた。

 火照る頬を手で扇ぐ私を見て、引越し屋さんがニヤニヤ笑っていた気がするのは、きっと気のせいだ。

 



【完】





おまけに続きます▶▷▶

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