【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 私はベットに腰掛け、そっと押して引き出しを閉めようとした。
 ところが、引き出しはうんともすんともいわない。

 どうなっているの?

 仕方ないので、一度引いてみることにした。

「あ、開いた」

 引き出しの中には、昨日も使用した黒い長方形の箱が入っている。
 箱の上には薄いピンクで『うすうす』と書かれた文字が。
 ドクドク、バクバクと心臓の音が聞こえるようだ。
 
 落ち着きなさい、叶恋。
 あなたはもう人妻なの。
 こんなの、なんでもないわ。

 そう自分に言い聞かせながらも、勝手にその箱を取り出していることに、羞恥と恐れと少しの罪悪感を感じる。
 サイドテーブルは夫の領域、そんな気がしていたからだ。

 箱に問題はなさそうだ。
 もう一度元の場所に置き、引き出しを閉めてみた。
 しかし、1センチほど隙間ができ、やはり最後まで閉めることが出来ないのだ。

「何か引っかかってるのかしら」

 再び引き出しを大きく開けてみた。
 すると、ガサッと物音がする。
 思った通り、何かが奥に引っかかっているようだ。

 引き出しの奥に手を入れてみると、カサカサとセロファンのようなモノに当たる音がする。
 引き出しを少し揺すってみると、ようやくそのモノを取り出すことができた。

「これ……何?」

 それは、お菓子などを入れる透明セロファンの小分け袋だった。
 その中にはF屋のポップキャンディが入っている。
 いや、違う。違うメーカーのものかな。
 ポップなグリーンのそのキャンディは何も書かれていなくて、真っ赤なモールで作ったリボンが棒部分に巻かれていた。
 小分け袋の大きさから察するに、あと2つはこの中にキャンディが入っていたと思われる。

「永真さんったら、甘いもの好きだからって、ベッドでキャンディを食べてたの?」

 虫歯になるじゃない!
 そう思い、後で注意しようと、そのグリーンのポップキャンディのキャンディ部分を持って取り出そうとした。
 
 ぬるっ

 え? ぬるっ?
 キャンディが滑った?

 そのキャンディは双子が大好きなそれとは違い、硬くなかった。

「何これ……古いのかしら」

 とそこへ……
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