【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 ビーフシチューは黒ビールで煮込んだだけあり、柔らかくコクのある仕上がりになっていた。

 しかし私はさっきのポップキャンディがどうしても気になっていて、シチューの味が半分も分からない。

「……れん? 叶恋? 少し飲むか?」

「え? あ、ああ! はい、ほんの少しだけいただきます」

 永真さんがワイングラスに赤ワインをほんの少しだけ注いでくれる。
 アルコールに弱い私だけど、今ではちょっとだけ耐性ができてきたようだ。
 永真さんと出会った頃に比べると、グラスに1杯くらいでは寝ないようになってきた。
 
 もちろん、アルコールを飲むのは自宅だけにしている。自宅なら寝てしまっても迷惑をかけることがないからだ。
 シチューに合わせた赤ワインはとても美味しい。

 でも、やっぱりさっきのポップキャンディがどうしても引っかかるのだ。
 
 あのセロファンは、キュートなピンクのハート柄のマステで閉じられていた跡があった。

 そして表面には『present for you』とメッセージが印刷されたゴールドのハート型シールが。

 子供の患者さんからもらったのかしら? 
 でも、子供って百均で小分け袋を買ってまで綺麗にラッピングする? 
 お母さんがしたのかしら。

 ……もしかして、女の人にもらったのかな。
 すごく有り得るような気がした。
 あのセロファンの小袋は大人の手作り感を感じたからだ。

 京香さんは「こけら落とし」とか「筆おろし」なんて言ってたけど、そんなわけあるはずない。
 いくら女性不信だったとは言え、永真さんはモテるはず。
 きっと家族が知らないだけで、付き合っていた人もいるはずよ。
 そ、それに、あんなに上手なんだしっ。

 そんなことを考えていたら、なんだかモヤモヤとしてきた。

「どうしたんだ? 
なんだかさっきからずっと心ここに在らずだな。
何かあったのか?」

 それはあなたのせい……とは言えないか。
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