【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 でも、そんな込み入った話はここで出来ない。
 ただのワンナイトの相手に、父の病気の話までされては迷惑なだけだろう。

 私は様々な思いを胸にしまい込み、昨日あった出来事だけをエイシンさんに話すことにした。
 
「……彼、待ち合わせの場所に、新しい彼女を連れてきたんです。その人は、私の後輩でした」
「は? 最低なヤツだな」
「私は知らなかったんですけど、その女の子は、実は創業者一族の娘で、おそらく彼にとっては断れない相手だったのだと思います」
「……だからと言って、浮気には違いないんだろう?
創業者の娘だからって、恋人をフッてまで付き合わないといけないわけじゃない。
それはその男が損得で動いているだけの事だ」
「わかってます。
私に見る目がなかったということです」
「ああ、そうだな。本当に見る目がない。
…………いや、スマン。言い過ぎだな」
「ふふッ……いえ、事実ですから」

 こうやって聞いてくれるだけでも有難いのに、思いがけず感情移入してくれているように感じるのは何故だろう。
この人とは話しているだけで心が温まる。
やっぱり優しい人だわ。

「決して、絶望するようなことじゃない」
「…………そうですね」
「……どの口が言ってるんだって話したけどな……」
「え?」
「いや……愚かな男がいたって話。なんでもないよ」
「そうですか……あっ!」
「……? どうした?」

 大変なことを思い出した。
 私、‪昨日は酔っ払ってここに運ばれたんだった。
 ワインバーの最後の記憶がない。ということは――。

「私、ワインバーでお支払いした覚えがありません!」
「ああ……なんだそんなことか」
「立て替えてくださったんですよね?
おいくらでしたか?」

 慌ててバッグから財布を取りだした。
< 39 / 182 >

この作品をシェア

pagetop