【おまけ追加】塩対応の汐宮先生は新人医局秘書にだけ甘くとける
 2年の終わりになって、京香が付き合っていた男と別れた。
 俺はチャンスだと思った。
 どう考えても、いつも京香の傍にいるのは俺だ。
 京香が立ち直った頃に告白しようと考えていた。

 ところがやけ酒に付き合っていると、「私には永真がいるからいいもん! あんな浮気男、こっちから振ってやる! ねぇ、永真、私と付き合おう?」と言い出したのだ。

 俺は京香がやけになっているだけだとわかっていたが嬉しかった。
 しかし相手が酔っぱらっている状況で返事をするわけにはいかない。

「そういうことは酔っていない時に言え」と言うと、京香は何を考えてるのか、俺にキスしてきたのだ。

 そして言った。「私のこと、ずっと好きだったよね? 気づいてたよ」と。

 今考えてみたら、俺の態度はきっとわかりやすかったのだろう。初めての恋だったから、気持ちを隠すこともできていなかったのだと思う。

 驚く俺に京香はさらに言った。
 彼氏と別れる原因になったのは俺のせいでもあると。
 京香がいつも俺の話をするから相手が愛想をつかしたのだと。

 俺はその言葉を信じた。
 だからその場で俺からも告白し、俺たちは付き合うことになっのだ。

「じゃあ……やっぱり元カノだったんですね」

「ああ、1ヶ月だけな」

「え?」

付き合うことになって2週間経ったときだった。

 いつも自習に使っていたワークスペースが満室で、俺を含めた解剖実習で一緒になった4人は、テスト前だというのに自習場所を失ってしまったのだ。

 そこで俺は実家のはなれで勉強することを提案した。
 二間続きの和室だが、使われていない部屋がある。
 そこなら金もかからず落ち着いて勉強ができると思ったからだ。

 思いがけず京香を自宅に招くことになって、俺は内心浮ついていた。
 もし親に会ったら、彼女だと紹介しようか。
 まだ付き合い始めたところだし、紹介するのは京香も気が引けるだろうか……。

 そんなことを考えていたら、俺たちの様子を見に兄貴がやってきた。

「今でも覚えている。兄と京香が初めて会った時のことを。二人ともお互いから目が離せず、くぎ付けになっていた。いわゆる一目ぼれってやつだな」

「そんな……」

「だが俺は信じたくなかった。
2年片想いして、俺たちはやっと付き合い始めたところだったんだ。
だからその光景に目を瞑って、見なかったことにしようと思った。
しかしその日から、京香の態度がおかしくなった。
俺を避けはじめたんだ」

「……」
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