〜Midnight Eden〜 episode2.【蛍狩】
「蛍さんとはいつから友達だったの?」
「私、中三の冬にこっちに引っ越してきたんだ。私より前に引っ越してきた蛍とは転校した中学のクラスも団地も一緒で、すぐに仲良くなった」
「それで高校も一緒だったんだね」
「この学校なら家から自転車で通えるし、偏差値は中ランクだけど、私や蛍にとっては偏差値ってあんまり関係ないからここでいいかぁって決めたの」
高校の偏差値どうでもいいと思えたのは、両親が離婚した十五歳の冬。
中学三年の春までの光は、都内トップレベルの偏差値を誇る杉澤《すぎさわ》学院高校への進学を狙っていた。
杉澤学院への進学、ゆくゆくは都内の一流大学から一流企業への就職。光の両親が娘にかけていた期待と夢が打ち砕かれたのは、中学三年のゴールデンウィークだった。
あの悪夢は思い出したくもない。
美夜はどこまで知っている?
3年前に光の身に起きた出来事は、調べればすぐにわかる。光の探りの視線を知ってか知らずか、光と目が合った美夜は微笑した。
「昨日蛍さんのインスタを検索してみたんだ。非公開で見れなくなっているけど、今もフォロワーがひとりいるよね。フォロワーは光さん?」
「そうだよ。……はい。蛍のインスタ」
蛍のインスタグラムのページを表示したスマートフォンを美夜に向けた。
「更新されないインスタをフォローしているのはどうして?」
「どうしてかな。……本当は蛍が生きてて、気まぐれにインスタ更新するかもって思ってるのかも。死人はインスタ使えないのにね」
更新されないSNSのフォローを外せない理由は、そこにいけばまだ蛍が生きているから。あそこは蛍が生きた証だ。
「少し突っ込んだ質問をするね。光さんは蛍さんがパパ活をしていたことは知っていた?」
「知ってたよ。ツイッターで客釣ってたって聞いてる」
「それを聞いてどう思った?」
「蛍のお父さんも今の仕事の稼ぎ良くないみたいなんだよね。バイトの手段は何でも良くて、蛍は自分の小遣いを稼いでるだけだったんじゃないかな。……だけど友達として止めるべきだったよ。私がパパ活を止めていたら、蛍は殺されなかったのに」
美夜に語った言葉は本心だ。
パパ活を最初に始めたのは光の方。光の話を聞いた蛍が興味を持って、自分もやりたいと言い出した。
男とデートするだけで数万稼げる。将来通う専門学校の学費の足しに少しでもなるならと、パパ活に手を出した蛍を光は止められなかった。
あそこで蛍のパパ活を止めていれば今も蛍は光の隣にいてくれたはずだ。
「なんで今さら蛍の話を聞きたいの? 犯人は捕まってるでしょ?」
「パパ活に関連した殺人事件の捜査で過去の事件を調べ直している最中なの。辛いことを思い出させてしまってごめんなさい」
川島の話では美夜はサラリーマン連続殺人事件の被害者と蛍を殺した中井道也の外見の類似を指摘し、川島のアリバイを確認しに来た。
大人は子どもには本当の情報を話さない。だから大人は嫌いだ。
「私、中三の冬にこっちに引っ越してきたんだ。私より前に引っ越してきた蛍とは転校した中学のクラスも団地も一緒で、すぐに仲良くなった」
「それで高校も一緒だったんだね」
「この学校なら家から自転車で通えるし、偏差値は中ランクだけど、私や蛍にとっては偏差値ってあんまり関係ないからここでいいかぁって決めたの」
高校の偏差値どうでもいいと思えたのは、両親が離婚した十五歳の冬。
中学三年の春までの光は、都内トップレベルの偏差値を誇る杉澤《すぎさわ》学院高校への進学を狙っていた。
杉澤学院への進学、ゆくゆくは都内の一流大学から一流企業への就職。光の両親が娘にかけていた期待と夢が打ち砕かれたのは、中学三年のゴールデンウィークだった。
あの悪夢は思い出したくもない。
美夜はどこまで知っている?
3年前に光の身に起きた出来事は、調べればすぐにわかる。光の探りの視線を知ってか知らずか、光と目が合った美夜は微笑した。
「昨日蛍さんのインスタを検索してみたんだ。非公開で見れなくなっているけど、今もフォロワーがひとりいるよね。フォロワーは光さん?」
「そうだよ。……はい。蛍のインスタ」
蛍のインスタグラムのページを表示したスマートフォンを美夜に向けた。
「更新されないインスタをフォローしているのはどうして?」
「どうしてかな。……本当は蛍が生きてて、気まぐれにインスタ更新するかもって思ってるのかも。死人はインスタ使えないのにね」
更新されないSNSのフォローを外せない理由は、そこにいけばまだ蛍が生きているから。あそこは蛍が生きた証だ。
「少し突っ込んだ質問をするね。光さんは蛍さんがパパ活をしていたことは知っていた?」
「知ってたよ。ツイッターで客釣ってたって聞いてる」
「それを聞いてどう思った?」
「蛍のお父さんも今の仕事の稼ぎ良くないみたいなんだよね。バイトの手段は何でも良くて、蛍は自分の小遣いを稼いでるだけだったんじゃないかな。……だけど友達として止めるべきだったよ。私がパパ活を止めていたら、蛍は殺されなかったのに」
美夜に語った言葉は本心だ。
パパ活を最初に始めたのは光の方。光の話を聞いた蛍が興味を持って、自分もやりたいと言い出した。
男とデートするだけで数万稼げる。将来通う専門学校の学費の足しに少しでもなるならと、パパ活に手を出した蛍を光は止められなかった。
あそこで蛍のパパ活を止めていれば今も蛍は光の隣にいてくれたはずだ。
「なんで今さら蛍の話を聞きたいの? 犯人は捕まってるでしょ?」
「パパ活に関連した殺人事件の捜査で過去の事件を調べ直している最中なの。辛いことを思い出させてしまってごめんなさい」
川島の話では美夜はサラリーマン連続殺人事件の被害者と蛍を殺した中井道也の外見の類似を指摘し、川島のアリバイを確認しに来た。
大人は子どもには本当の情報を話さない。だから大人は嫌いだ。