殺人容疑をかけられた悪役令嬢の真実。
セレスティンは、皇后の説教が終わった後。庭園に設置されているベンチに腰を下ろした。ダンスホールから少し離れた場所にあるため人目も少ない。
 静かな場所で座っていると彼女の目尻から涙が溢れてきた。泣くつもりはなかったが、涙がどうしても止まらない。
 頑張ってきたつもりだったが、ウィルモットには届かない。皇后も責める一方で話をまともに聞いてくれなかった。
 慰めることならやってきた。それでも彼はそれを皮肉に取ってしまい、逆に話にならなかったことが多い。大声で怒鳴り散らすだけで。

(前だって、さり気なく慰めたら『だったら、アイツらを殺して来い』と逆ギレされたし……どうしたら良かったの?)

 考えれば考えるほど分からなくなっていく。
 涙を手で拭っていると、ガサッと足音が聞こえてきた。
 ハッと思い、慌てて振り向くと、その人物に驚く。レンデル第2皇子だったからだ。
 他の人に見られるだけでも恥なのに、よりにもよって第2皇子だなんて。
 慌てて立ち上がろうとするセレスティンにレンデルは、スッとハンカチを差し出してきた。

「えっ?」

 急にハンカチを差し出されるからセレスティンは頭が追いつかず、きょとんとしてしまう。これは、どういうことだろうか?
 しかし、レンデルは黙ったままハンカチを彼女の手に握らせてくる。そして、そのまま立ち去ってしまった。取り残されるセレスティン。
 チラッと手に持たされたハンカチを見る。白いハンカチだったが、刺繡が施されている。アルバーン帝国の紋章が。

(泣いてきたから、慰めるつもりで渡してくれたのかしら? それに……)

 暗がりに月の光が差し込んだ彼は、少し切ない表情をしていた。夜空に似合う黒髪はキラキラと輝いて見え、とても綺麗に映った。
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