お飾り妻は本日限りでお暇いたします~離婚するつもりが、気づけば愛されてました~
 声を上げたいのに実際は喉が詰まってしまい声すら出ない。

 いい年なのに中学生みたいにうろたえつつ、守頭は沙織を軽く抱き寄せる。
 と、白檀のほのかな香りが鼻孔をくすぐり、それにまたドキリとする。

 香水のあからさまな香りとは違う、肌に染みた香木の香りは海外に暮らし、海外にかぶれた女性と関わることの多い守頭にとって馴染みのないもので、それだけに新鮮で、変に気持ちが昂ぶっていく。

 欲情の気配に息を詰め、とりあえず帯と着物を脱がせようと手を動かす。
 西陣織の名古屋帯に震えがちになる指で触れ、結び目の隙間に指を差し込む。その硬い感触とは裏腹に、するりとほどけ肌を撫でる織物の滑らかさ。
 ゆっくりと結び目が崩れていく様は、いけないことをしている気持ちを否が応でも高めていき、渦巻きベッドの上にたわむ布は普段は無垢かつ無邪気な沙織の姿を妖艶に見せる。

 ようやくほどき切って息をつけば、着物のたもとが大きく崩れ、そこから白い鎖骨が覗くのにまた心臓を疼かせてしまう。

「目の毒だ……」

 思わず呟き、溜息を落としなんとか着物を脱がせれば、熟した柿と同じ色をした半襟と長襦袢姿となった沙織がしどけなく崩れ、ベッドの上で丸くなる。
 
 半分やけくそで毛布をかけてやり、空調の温度を整え部屋を出る。

(なんなんだ、あの色気は)

 子どもだと、まだ幼いと思っていた沙織が見せた女らしさに、襦袢と肌の色の対比に、まるで露出などないのに鼓動が上がる。
 これでは今夜、眠れそうにないなとひとりごちながら、守頭は混乱する頭をかかえ自室としている客間に入っていった。

 
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